有朋自遠方来〜

有朋自遠方来不亦楽乎

これは『論語』の「学而篇」冒頭にあるあまりに有名な一節である。高校の漢文の教科書にも載っているかも知れない。しかし、解釈は2つ、或いは3つあって、決着が付いていない。

  1. 朋有り、遠方より来たる、また楽しからずや
  2. 朋遠方より来たる有り、また楽しからずや

上記2つは定番の解釈であるが、ネット検索したところ、その他に[貝塚茂樹訳(中公文庫)など]では、

  1. 友朋(ゆうほう)遠方より来たる

という解釈も行われているらしい。中国語で友人のことを「朋友(péngyou)」というが、順番を逆にしても同じ意味ということなのだろう。

それはさておき、a と b の解釈では「有」は動詞として扱われている。しかし、本当に動詞なのだろうか?

小学館「中日辞典 第2版」私が昨年(2016年)春に買ったカシオの電子辞書「EX-word XD-K7300」に収録された小学館「中日辞典 第2版」の「有(yŏu)」の項目を見ると、

  1. (人を主語として)持つ。持っている。
  2. (文頭に時間・場所を表す語句を置き)ある。いる。
  3. ”有”+形容詞、”有”+数量の形で、程度や数量に達する。
  4. 発生する。生じる。
  5. 《“有人”“有一天”などの形で》ある・・・。

となっている。2番目の意味が該当するとしているわけである。

しかし、私はこの一節を「ある友人が遠くから来る、楽しみではないか?」と解釈したい。つまり、ここでの「有」は、5番目の、「ある人」、「ある日」という時の「ある」という意味、漢字で書けば「或」だと思うのである。「有的」としても意味は同じ。そういえば、中国人である家内は、日本語で「ある友達」と言うべきところ、母国語である中国語に引かれてか、「あるの友達」と言ってしまう。

小学館「中日辞典 第2版」には、「或」という意味での「有」に関して、次のような用例が載っている。(面倒なので「们」以外は簡体字に変換せず。)

  • 〜的地方雨大、〜的地方雨小
    あるところは大雨が降ったが、あるところでは少ししか降らなかった。
  • 他们〜(的)時候上午開会、〜(的)時候下午開会
    彼らは午前に会議を開くこともあれば、午後に開くこともある。
    (直訳すると、「彼らはあるときは午前に会議を開き、あるときは午後に開く」。)

学研「新漢和大字典(普及版)」なお、参考ながら「或」という漢字の読み方は、訓読みの「ある」しか学校では習わなかったが、学研の「新漢和大字典 普及版」(藤堂明保・加納喜光編)を引いてみると、

  1. 呉音は「ワク」
  2. 漢音は「コク」
  3. 上古音 ɦuǝk
  4. 中古音 ɦuǝk
  5. 中世音 huo
  6. 現代音 huǝ(拼音huò

となっていて、「有(拼音 yŏu)」とは開きがある。下に「心」を付けた「惑」(「惑星」の「惑」)と同じ音である。