草堰港遺跡の火起こし器
作成:2023/12/23
今年(2023年)8月下旬、中国江蘇省興化市の遺跡から錐揉み式火起こし器が出土したという記事が「Yahoo!ニュース」から流れた。「CGTN Japanese/AFPBB News」からの転載である。早速読んだのだが、記事に書かれた情報では遺跡の位置を特定できなかった。そのためしばらく悶々としていたのだが、最近になって記事中の地名に誤字がある(誤:「千堆鎮」、正:「千垛鎮」)とわかったので、遺跡の位置をほぼ特定できた。
更に、上記サイトの記事では画像がひとつしかなかったので、多少とも詳しい記事を求めて中国語の記事も探したところ、中国江蘇網の記事を見つけることが出来た。そこで翻訳して紹介する。
- ● 元記事
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「年代最早的钻木取火器出土在兴化,草堰港遗址考古文物首亮相」
https://jsnews.jschina.com.cn/yuanchuang/202308/t20230822_3270961.shtml 2023-08-22 17:53:00
ただし、この記事はこの記事で貝類のアサリ、植物のオニバス、釜を中心とした陶器のことを直接触れていないという欠点もある。
なお、私は中国語も考古学も素人なので、《▶ 「中国江蘇網」の原文》をクリックすると中国語の原文が現れるようにしておく――誤訳がなければ良いのだが......(^^;;;
「興化市で最初期の錐揉み式火起こし器出土、草堰港遺跡考古文化財トップが公表」(中国江蘇網の記事)
8月21日から22日にかけて招集された江蘇地域文明探源プログラム推進会議で、江蘇省文化財考古研究所考古チームは専門メディアに向けて淮河下流をテーマに興化市草堰港(Căoyàngăng)遺跡考古発掘で得た成果を展示した。
「中国江蘇網」の原文
8月21日至22日,在兴化召开的江苏地域文明探源工程推进会上,江苏省文物考古研究所考古团队向专家媒体展示了淮河下游课题中,兴化草堰港遗址考古发掘取得的成果。
草堰港遺跡は、今から7200年前の近年確認された江淮東部里下河地区最初期の新石器時代遺跡である。草堰港遺跡考古発掘プロジェクトの責任者甘恢元の紹介によると、草堰港の所在する地方は「鍋底窪」と俗称される里下河内陸部であり、江蘇省興化市千垛鎮草王村東顔圩の北側に位置する。南東の興化市からは 18 km 離れている。
「中国江蘇網」の原文
草堰港遗址距今7200年前后,是近年新确认的江淮东部里下河地区时代最早的新石器时代遗址。草堰港遗址考古发掘项目负责人甘恢元介绍,草堰港所在的地方是俗称“锅底洼”的里下河腹地,位于江苏省兴化市千垛镇草王村东颜家圩北侧,东南距兴化市18公里。
海面下の湿地飽水環境という特殊な埋蔵環境のため、草堰港では大量の有機遺物が保存されていた。樹木、木器、骨器、筵及び動植物が非常に豊富に遺存していたのである。
現場では一部分の炭化籾、炭化菱と炭化水稲が展示された。甘恢元の話では、籾の大部分は食後に剥がれ残った殻である。籾の数量が最多で、菱と水稲がそれに次ぐ
。
遺跡からは田螺、牡蛎だけでなく、鹿、牛、犬、各種鳥禽類も出土する。したがって、当時の草堰港は海からあまり離れていなかったものの、食物が主に陸地と淡水水系に由来していたことになり、古人の狩猟採集を主とする生業経済モデルが浮き彫りとなった。
「中国江蘇網」の原文
特殊的负海拔湿地饱水埋藏环境,使草堰港保存了大量的有机质遗物,树木、木器、骨器、席子及动植物遗存十分丰富。
现场展示了一部分炭化芡实、炭化菱角和炭化水稻。“芡实大部分是吃过后剥剩下的壳。”甘恢元说,“芡实的数量最多,其次是菱角和水稻。”
遗址还出土了蚬壳、牡蛎,以及鹿、猪、牛、狗和各类鸟禽。可以说,当时的草堰港离海不太远,但食物主要来源于陆地和淡水水系,这反映出先民以狩猎采集为主的生业经济模式。
出土した文化財の中ではとりわけ骨器の数量が厖大である。骨鏢、骨鏃、骨針等の骨器の他に草堰港からは相当数の靴形器が出土した。甘恢元の紹介によると、草堰港出土の靴形器では鹿角の弯曲した形状を利用して製作されているが、その中には穴が空いているものも空いていないものもあり、一部の靴形器には多少の装飾まであるとのこと。草堰港からは半製品の靴形器も出土するが、これらの半製品は靴形器が当地の産物であり、外来ではないことを説明する
。
河南、山東、安徽、江蘇等の地域では皆靴形器が出土している。安徽省文化財考古研究所副研究員の張小雷は以前の研究で、鹿角靴形器の流行期は今から7300~6000年前で、流行地区は淮河中流と環太湖地区であると考えていた。今から考えると、靴形器の流行範囲は淮河中下流域に広がっていたことになろう。
ただし、靴形器の具体的用途は未だ明確な結論が出ていない。
「中国江蘇網」の原文
出土的文物当中,骨器数量尤为庞大。骨镖、骨镞、骨针等骨器之外,草堰港出土了相当数量的靴形器。甘恢元介绍,草堰港出土的靴形器是利用鹿角的弯折形状制成,其中有的穿了孔,有的没有穿孔,部分靴形器上还有一些装饰。草堰港还出土了部分靴形器半成品,“这些半成品说明,靴形器是本地产物,不是外来。”
在河南、山东、安徽、江苏等地,都曾有见靴形器出土。安徽省文物考古研究所副研究馆员张小雷此前研究认为,鹿角靴形器流行的时间是距今7300至6000年,流行的地区是淮河中游和环太湖地区。“现在看,靴形器的流行范围可以扩大到淮河中下游了。”不过,靴形器的具体用途,至今尚未有明确定论。
骨器の中で比較的珍貴なのは骨笛の半完成品1本である。骨笛の上には穴を空けることに成功していない音孔が6つあるが、炎で焼いた痕跡が明らかである。草堰港遺跡で生活した古人たちは、かつて笛の音を試して音楽愛を表現し、遙けき大昔の音を残しておいたと見える。
「中国江蘇網」の原文
骨器中,较为珍贵的是一件骨笛半成品残件。骨笛上的6个音孔没有成功开孔,但火焰灼烧的痕迹十分明显。可见,生活在草堰港遗址的先民,曾试用笛声表达音乐之爱,留下了遥远的远古之音。骨笛の開孔には火が必要であるが、古人は如何にして火を起こしたのだろうか? 草堰港から出土した遺物の中には極めて明白に錐揉み式火起こし器と判明したものがひとつある。甘恢元の紹介によると、この遺物は今のところ最も年代が早い錐揉み式の火起こし器である。錐揉み式火起こし器は一般に取火板と取火杵から成り、取火板の縁には予め切り込みが入れてあって、摩擦する過程で発生する木屑を収集するようになっている。火起こし器の下方には燃えやすい干し草が詰めてあって、木屑が火花を帯びて落下した後、引火して火種となるのに十分である。
ひとつの遺物の出土が草堰港遺跡に初めてスポットライトを当てることになった。江蘇省文化財考古研究所は2022年12月に総面積8万平米を越える遺跡の考古発掘作業を拡大したが、発掘されたのはまだ1200平米と端緒についたばかりである。甘恢元は、目下の考古発見から、草堰港遺跡が江淮東部ないし淮河下流の先史考古文化序列の重要性を完全にする一環となる上に、直線距離で約 30 km にしかならず、高邮湖以東の龍虬庄(Lóngjiúzhuāng)遺跡の直接の源でもあることを示した。
当今、考古従事者たちの淮河流域の発掘は、この広大な土地の先史文化の新たな面貌を現しめた。以前、学界は淮河地域が江淮東部地区を含めて、南北、東西文化交流の回廊と認めていたものの、相対的に独立安定した文化区としてではなく、周辺の影響を比較的大きく受けた凖文化地域としてであった。
甘恢元は話す。草堰港遺跡等一連の考古発見の後では、我々は淮河中下流地区が新石器早中期にずっと独立安定し、自らの文化特質を鮮明に具有する重要な先史文化区であることを認識した。その周辺に与える影響は、周辺から受ける影響よりも大きく、重要性がますます浮き彫りになった。
「中国江蘇網」の原文
骨笛开孔需用火,先民如何取火?草堰港出土的文物当中,极为亮眼的当属一件钻木取火器。甘恢元介绍,这件文物是目前可见年代最早的钻木取火器实物。钻木取火器一般由取火板和取火杆组成,取火板边缘预制凹槽,收集摩擦过程中所产生的木屑。在取火器下方垫上易燃干草,木屑带着火星掉落下来之后,就能够引燃获取火种。甘恢元认为,草堰港遗址的先民使用徒手法钻木取火的可能性较大。
一件件文物的出土,令草堰港遗址初露光芒。江苏省文物考古研究所于2022年12月开始对遗址展开考古发掘工作,在逾8万平方米的总面积上,已经初步发掘1200平方米。甘恢元表示,从目前考古发现可以认为,草堰港遗址是完善江淮东部乃至淮河下游的史前考古文化序列的重要一环,也是距其直线约30公里、高邮湖以东龙虬庄遗址的直接源头。
如今,考古工作者们对淮河流域的发掘,令这片广袤土地上的史前文化揭开了新的面貌。“以前学界认为淮河流域,包括江淮东部地区,是南北、东西文化交流的走廊,它不是相对独立稳定的文化区,而认为是受周边影响比较大的亚文化区域。”甘恢元说,“但在草堰港遗址等一系列考古发现之后,我们认为,淮河中下游地区在新石器早中期都是一个独立稳定、具有鲜明自身文化特质的重要史前文化区。它对周边的影响比周边对它的影响要更大,重要性愈发凸显。”
原文の筆者: 童棹凡(新江苏·中国江苏网记者)
草堰港遺跡の地図上の位置
中国の先史文化
時期 | C:長江流域 | H:黄河流域 |
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1 | 玉蟾岩文化/上山文化 | 該当無し |
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5 | 馬橋文化/三星堆文化/十二橋金沙文化 | 二里頭文化(夏?)/二里岡文化(商?)/西周・春秋・戦国 |
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