さいたま市の鉄道(LRT)網案・第6版
最終更新:2023/12/27|旧版:2017/05/13
さいたま市は政令指定都市には珍しく、鉄道・地下鉄部門を持たない。2001年5月に政令指定都市になってまだ19年しか経たず、合併前の浦和市、大宮市、与野市単独では財政規模の点でも困難だったせいである。しかし、三市で合併し、更に岩槻市と合併することによって、人口は約132万人(2020/11)、面積は 217.43 平方 km に広がった。人口密度は、6,067人/km2(岩槻合併前は 6,339人/km2)と非常に高い。
令和2年の人口集中地区(地理院地図「電子国土Web」)
それを図示したのが上の地図である。さいたま市の人口密度は、大阪市、川崎市、横浜市と比べると低いものの、名古屋市と同等、京都市、札幌市、仙台市等と比べると約3倍である。しかも、市内東西間交通の便の悪さは定評があるから、それなりの需要があることは確かである。
一方、埼玉高速鉄道は、赤羽岩淵駅経由で東京メトロの南北線に直通する。赤羽岩淵から川口元郷、南鳩ヶ谷、鳩ヶ谷、新井宿、戸塚安行、東川口(JR武蔵野線に連絡)各駅を経て浦和美園駅まで延長14.6kmの路線であるが、徐々に利用者数が増えているものの、借入金の返済には手が回っていない。この15kmにも満たない路線では、経営規模が小さすぎるのである。
また、浦和レッズの本拠地埼玉スタジアム2002は、サッカー専用の設計であるため、他のスポーツに転用できない。埼玉高速鉄道はあるものの、浦和美園駅とは1.2kmも離れていて交通の便が悪く、バス輸送に依存せざるを得ないため、浦和レッズの対戦以外のサッカー試合、特に国際試合をなかなか誘致できないでいる。しかも芝生の美しさを維持するため、試合に使えるのは年間たった30日程度が限界という制約がある。30日しか営業日数を確保できないのでは、固定の店が進出しにくいであろう。
更に、右図のさいたまSMARTプラン(2010年のさいたま市総合都市交通体系マスタープラン基本計画より)を見ると、地下鉄7号線(東京メトロ南北線~埼玉高速鉄道)や東西交通大宮ルートも盛られているものの、これらは構想の段階で頓挫していいる上に経済状況の変化を反映していないので、実態はまだまだ車中心の交通体系計画だといえる。環境問題、石油不足がますます深刻化する中、自家用車での移動に頼らないで生活できる社会への脱皮が必要である。
こういった状況を打開するために私が考えたのが次に列挙するLRT(軽量軌道交通システム=次世代型路面電車システム)路線案である。
- 赤羽連絡線(SR・東京メトロ赤羽岩淵駅~JR赤羽駅)
- さいたま環状線(JR大宮駅~見沼区南部~緑区西部~JR浦和駅~JR武蔵浦和駅~桜区~西区南部~JR大宮駅)
- スタジアム連絡線(SR浦和美園駅~見沼区片柳地区でさいたま環状線に接続)
さいたま環状線は、図示すると下のようになる。第6版にあたっては、Google MAP API ではなく、ウェブ版 Google Earth を利用することにした。
パソコンで既定のブラウザを Google Chrome にしていて、上のような画面にするには、
- 上の画像をクリックする → ウェブ版 Google Earth が指定された経度・緯度を中心として別タブで起動
- KML ファイルをダウンロード → download
- 地図画面の左端に縦に並んだアイコンの内「プロジェクト」(下から3番目)をクリック
- 広がった「プロジェクト」メニューの下部にある「▶チュートリアルを見る」で示された方法で KML ファイルをインポート
という手順を辿る。KML(Keyhole Markup Language)とは、地理デ ータと関連コンテンツを格納するための XML ベースの形式で、各種地理データの表示に使用される標準的なファイル形式 である。
改版履歴は次の通り。
- 初版&第2版:LRT(軽量軌道交通)だけでなく一部従来型鉄道も想定し、地図ソフトの画面から作成した画像に大まかな路線を描いたていた。
- 第4版:建設されそうもない路線を省略するとともに、Google Map API を利用して路線案をグーグルマップに重ね合わせた(それにより拡大・縮小・移動可能となった)。
- 第5版:ルートをなるべく現実(或いは工事中・整備計画中)の道路に沿わせた。
- 第6版:グーグルマップではなく、ウェブ版 Google Earth 上でルートを表現するようにした。
さて、LRTのメリットは、従来型鉄道よりも輸送量が劣る代わり、建設費が数分の1~半分程度で済み、バスよりも定時制が確保しやすく、工夫次第で鉄道の路線に乗り入れることも可能なことである。昔のチンチン電車は低速であったが、現代のLRV(LRTの車両)は、通勤電車や地下鉄並みの速度で走ることも可能である。政令指定都市や中核都市内部の交通手段としてぴったりなので、欧米やアジア各国に導入例が多数ある。残念なことに日本では実例は少ないが、既存の富山市と広島市、熊本市などに加え、今年(2023年)8月に宇都宮市・芳賀町の「ライトライン」が開通した。ただし、地域交通体系としてLRTの名に相応しいのは今のところ「ライトライン」だけである。
- 富山市: ポートラム&セントラム(富山市「▶路面電車推進課からのご案内」のページ)
- 広島市:広島電鉄の「車両の紹介:超低床車 5200形グリーンムーバーエイペックス」
- 宇都宮市:芳賀・宇都宮 LRT(宇都宮市「東西基幹公共交通(LRT)」のページ)
さいたま市のLRT路線(「Saitram」が良いかも!?)を構想する(?)に当たって、
- 路線は、市役所・区役所、大学・高校、大規模医療機関、団地、ショッピングセンター、スポーツ施設など現在でも交通需要の多い地点(旗でプロット)を経由するようにする。
- 既存の駅を起点として既存の鉄道との連絡を良くする。
- さいたま市には、他の都市と違って、交通網の明確な核が2つある(JR大宮駅とJR浦和駅)。
- 市民、特に自動車運転免許証を持たない学生、主婦、老人が時間に安心して利用できる交通機関が必要である(バスは定時制に不安がある)。
- 自動車運転免許証を持っている市民でも、荷物を運ぶ必要がなければ、車を運転するよりはLRT(とLRTに連携したバス)を利用した方が合理的と思える環境を作る。
- 片柳地区にある「さいたま市思い出の里市営霊園」への季節的大交通渋滞を解消する。
ことを考慮した。
駅間距離は1km程度、車両は3両または4両編成が適切であろう。世間に流布している「東西交通大宮ルート」の問題点は、交通需要の少ない見沼田んぼがルートの大部分になる点である。同様に、埼玉高速鉄道を岩槻駅方面に延伸するのも、城南小学校以南の沿線人口が少なすぎてフル規格の鉄道に十分ではないことである。絵になる写真の撮影場所になることよりも、交通機関としての採算性の方が重要である。
各路線の解説をしたい。
- 0.赤羽連絡線(SR・東京メトロ赤羽岩淵駅~JR赤羽駅)
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現状でも地下鉄南北線・埼玉高速鉄道に赤羽岩淵駅は存在するが、副都心方面へ行くために赤羽駅までの数百メートルを歩きたくはないものである。王子駅でのJRとの接続(乗り換え)も不便である。SR(埼玉高速鉄道)線に乗り入れたLRV(LRTの車両)を赤羽駅行きとすれば利便性が格段と高まるであろう。川口元郷駅から西に向かって川口駅で京浜東北線に接続することも考えたが、池袋や新宿に行くには赤羽乗り換えの方が便利である。とにかく、赤羽駅でJRに連絡できなければ、他の新線ができても赤字垂れ流しなるだけなので、大前提という意味で0番の路線とした(笑)
- 1.さいたま環状線
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JR大宮駅とJR浦和駅を南北の極とするジャガイモ型(?)の環状線である。駅(電停)は、JR大宮駅から時計回りに、大宮区役所前、東町、天沼町、南中野、片柳、市営霊園前、東片柳、南片柳、三室、芝原、中尾、駒場、本太、浦和駅東口(JR)、別所、武蔵浦和駅(JR)、四谷、西浦和駅西(JR)、桜田・新開、桜区役所前、埼玉大学前、大久保領家、島根、植水、水判土、三橋、上小町、桜木町、大宮駅(JR)あたりだろうか?
大宮区役所、自治医科大附属さいたま医療センター(天沼町)、東新井団地・日大法学部大宮校舎(南中野)、思い出の里市営霊園、大宮共立病院・大宮聖苑(東片柳)、市立病院、緑区役所・プラザイースト、駒場運動公園、南区役所(武蔵浦和駅)、田島団地(西浦和駅)、桜区役所・プラザウェスト、埼玉大学、さいたま市民医療センター・加茂川団地(島根)、県立大宮南高(植水)、県立大宮光陵高(水判土)、大宮ソニックシティ(桜木町)がこの路線の沿線に立地する。逆に言えばこれらの施設を巡るように曲線を引いたら環状線になったのである。
- 2.スタジアム連絡線(東片柳~SR浦和美園)
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東片柳でさいたま環状線から分岐し、上野田、埼玉スタジアム(北・東)経由でSR浦和美園駅に接続、一部は埼玉高速鉄道に乗り入れる。沿線には、慶大浦和共立キャンパス、県立浦和東高、浦和学院高、カインズホーム浦和美園店、埼玉スタジアム2002、イオンモール浦和美園がある。
これらのLRT路線が埼玉高速鉄道に乗り入れて赤羽に接続すれば、埼玉スタジアムから、
- 山の手線内側には、浦和美園駅で埼玉高速鉄道に乗り換え、そのまま地下鉄南北線で行ける。
- JR浦和駅方面には、スタジアム連絡線・環状線外回りで行ける。京浜東北線だけでなく、宇都宮線、高崎線に乗り換えることもできる。浦和レッズのファンはさいたま市民、特に旧浦和市民が多いのだから、試合後浦和駅周辺で宴会のできるコースを歓迎するに違いない。
- JR大宮駅方面には、スタジアム連絡線・環状線内回りで行ける。大宮は言うまでも無く埼玉県の交通の中心であり、新幹線、京浜東北線、宇都宮線、高崎線、埼京線・川越線、東武アーバンパークライン、ニューシャトル線に乗り換え放題である。
- 池袋・新宿・渋谷方面には、埼玉高速鉄道(SR)経由、赤羽駅乗り換えで行くのがメインとなろうが、浦和駅経由や大宮駅経由で湘南新宿ライン利用でもたいした差が無い。
- 武蔵野線各駅には、LRVに乗ったまま東川口駅に行って乗り換える。大宮駅や浦和駅をターミナルとするのではなく、片柳電停~埼玉スタジアム(東・北)電停~JR東川口駅のLRVピストン輸送があっても良い。
課題は、サッカー試合のない日、或いは通勤通学以外の時間帯に乗降客を増やすにはどうするかということ。埼玉スタジアム駅のそばに超高層マンションを数棟建てたり、中学・高校向けのレンタル運動場・練習場などを建設するのも良いかも知れない。「人が常にいる」という状態を作ることが商店街や飲食店街の形成に重要である。幸い埼玉スタジアムの北側にカインズホーム浦和美園店が開店した。
さて、どこがさいたま市LRT(Saitram)の経営主体となるかが問題となるが、さいたま市や埼玉県ではなく、埼玉高速鉄道が経営するべきであろう。
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再度掲載するが、下の「令和2年の人口集中地区」からわかるように、さいたま市の人口密集地区は、南の川口市、北の上尾市の人口密集地区と繋がってしまっている。
令和2年の人口集中地区(地理院地図「電子国土Web」)
- 第4版への改訂にあたって省略した他の路線を考えると、さいたま市からはみ出てしまうので、市営では都合が悪い。
- 埼玉高速鉄道の経営なら、同社が既に持っている緑区大門の車両基地を活用できる。
- LRTであるからには、路線バス交通との連携が不可欠であるが、初乗り運賃が重複しない運賃体系の構築には埼玉高速鉄道、LRTさいたま環状線・スタジアム連絡線・赤羽連絡線、路線バスを一体で経営できた方が望ましい。
- 市や県などの地方公共団体自体が経営すると、とかくコスト意識が希薄になるので、それを未然に防ぐ。
さいたま市は、鉄道部門を持つ代わりに、県や川口市とともに埼玉高速鉄道に大幅な資金援助をするだけでなく、電停の近くに駐輪場を設置するなど環境整備に力を入れるべきである。