風仙洞

レジストラ間のドメイン移転

更新:2024/02/29|作成:2021/07/23

2021年4月~6月に、レジストラ間のドメイン移転という比較的珍しい経験をしたので、記録をしておきます。

このサイトのドメイン「fengxian-urawa.com」ではなく、私が理事としてWebサイト管理を昨年(2020年)秋から行っている某アマチュア歴史研究団体のサイトでの話です。

なお、料金及びスペックは2021年当時のものです。さくらインターネットに関しては、2023年以降、初期手数料が無料化され、レンタル・サーバーのスペックが上がる一方、レンタル・サーバーや独自ドメインの料金は値上げされています。

目次

ドメイン移転の理由

会として正式発足する前の2020年6月に、当時の会長(現会長とは別。以下、単に「会長」と記す)がレンタルサーバー会社A社と契約し、「.net」の gTLD(ジェネリック・トップ・レベル・ドメイン)をもつドメインを取得しましたが、私がサイト管理するようになってから、いくつか問題点が発覚していました。会長はインターネットやITに詳しくないので、損な契約をしてしまったようです。

  • 各種ファイルをサーバーにアップロードすると、ファイルのタイムスタンプがアップロードした日時に変わってしまう。
  • メーリング・リスト機能が無い。
  • コントロール・パネルの自由度が少ない。
  • ユーザーはドメイン・ネーム・サーバーのレコード設定ができない。
  • レンタル・サーバーの初期費用が高い(キャンペーン適用で本体2,490円/年+消費税249円)。
  • レンタル・サーバーの利用料(本体10,000円/年+消費税)は容量が200GBであることを考えると高くはないが、無駄に高スペック。
  • SSLオプションの料金が高い(初期費用本体1,000円+利用料本体13,200円/年+消費税1,420円)。
  • ドメインの取得料金が高い(2年で本体7,000円+消費税)。
A社のSSL料金

このため、レンタル契約の更新が6月にあるのを機会に、Webサーバーの移転を提案していましたが、3月の理事会で承認されました。移転先は私が契約していて勝手がわかっている「さくらインターネット」です。

さくらインターネットの個人向けとして標準的な料金コース「さくらレンタルサーバ」スタンダードの場合、

  • 初期事務手数料1,048円、利用料5,238円/年と約半分。
  • ドメインの移転料金は1,886円(有効期間1年延長)。更新料金も1,886円/年。
  • SSL化は、Let's Encript の利用により無料。

とずっと安く、技術的仕様も問題ありません。ディスク容量は100GBとやや少ないものの、大量の動画、画像をアップロードしない限り問題にはなりません。

サーバー/ドメインの移転手順

レンタル・サーバー会社のヘルプ・ページを読んで調べたサーバー/ドメインの移転手順は、次の通りです。

  1. 現レンタル・サーバー会社に解約の申込みをする。ドメインの扱いをどうするかも決断する。
  2. 現レンタル・サーバー会社が提携しているレジストラから独自ドメインの「Transfer Authorization Code(s)」をもらう(解約申込みから数日後。現・新レンタル・サーバー会社の提携先レジストラが JPRS である場合は不要)。
  3. 新レンタル・サーバー会社に会員登録し、レンタル・サーバーを契約する(この時点で「初期ドメイン」で利用できるようになる。2週間くらいの無料試用期間が設定される)。
  4. 新レンタル・サーバー会社でドメインの転入手続きを行う(「Transfer Authorization Code(s)」が必要になる)。
  5. CMS を利用している場合は、旧サーバーでコンテンツのエクスポートを行う(多分)。
  6. 新レンタル・サーバー会社のレンタル・サーバー・コントロールパネルから、ドメインを追加する(ドメインの料金は即座に請求される)。インターネット上で有効になるには数時間~48時間必要。
  7. SSL の設定をする(無料の Let's Encript ならば簡単に設定できるが、有料のものは登記書類の提出が必要だったりする)。
  8. https 転送設定、www 転送設定を行う。
  9. 各種ファイルを FTP ソフトで転送する。CMS を利用する場合は、コンテンツのインポートを行う(多分)。
  10. 独自ドメインでメール・アドレスを作成する場合は、アカウントを作成する。

A社でもさくらインターネットでも、ヘルプページにドメイン移転という項目があるからには制度としてドメイン移転が可能とわかっていました。しかし、懸念材料がありました。実は米国のドメイン登録情報サービス ICANN の LOOKUP での Domain Status が「active」ではなく、「clientTransferProhibited」だったのです。

「clientTransferProhibited」の意味は、

This status indicates that it is not possible to transfer the domain name registration, which will help prevent unauthorized transfers resulting from hijacking and/or fraud. If you do want to transfer your domain, you must first contact your registrar and request that they remove this status code.

です。拒否されるかも知れないと心配でしたが、さくらインターネットのヘルプページを読むと、他社のドメイン管理での運用方法が解説されていたのが慰めでした。

さくらインターネットでのレンタル・サーバー契約については、タイミングだけが問題でしたが、独自ドメイン移転にあたっては、技術的な問題よりも契約手続き上の問題がありました。

チェック・ポイントとしては、

  • (gTLD の場合)ICANN の LOOKUP サービスで Domain Status が「active」であるかどうか?
  • 独自ドメインが ~jp ドメインであるか、com/net/biz/info などの gTLD であるか? (JPRS=日本レジストリサービス株式会社がドメイン名の登録管理を行っている~JPドメインの場合はレジストラの承認なしでもドメインの移転手続きを進められる。)
  • 独自ドメインが会社名義であるかどうか?(登記書類や公共料金の請求書など住所を証明できるものが必要?)
  • 契約担当者の身分を名刺などで確認できるか?
  • 新旧レンタル・サーバーとの契約担当者が同一であるか?
  • ドメインの契約から60日以上経過しているか? また、30日以上有効期間が残っているか? (この2条件を満たしていない場合は、ドメイン移管ができないので、新レンタル・サーバー×旧レンタル・サーバー会社(レジストラ窓口)での筋違い運用になる。)
  • 支払い方法がクレジットカード払い(誰の?)、銀行振込、コンビニ払いのどれであるか?

が挙げられます。

さて、さくらインターネットへの移転の問題に戻ると、契約担当者とレンタル・サーバー会社(ドメイン管理窓口)、レジストラを表にすると次のようになります。

契約担当者移転元/先レンタル・サーバー会社
(ドメイン管理窓口)
レジストラ
registrar
会長移転元A社Network Solutions 社
(米国)
会長?移転先さくらインターネット日本レジストリサービス
(JPRS)
A社の解約届
  • 画像をクリックすると別ウィンドウで拡大

従来、会長が契約担当者となって団体契約していたので、私としては移転先でも契約担当者としてクレジットカード登録をしていただくつもりでいて、A社のサイトからダウンロードした解約届のPDFファイルを添付して処理手順をメールするなどお膳立てしましたが、大問題が発生しました。会長が、移転を取りやめるか1年延期したいと言い出したのです。

中小企業で専任のWeb担当者がいない場合や、単にWebページを作成したりテーマを選んで WordPress を設定した経験しかないのでは不安になりますが、会長の師匠であるパソコン教室の老先生もお手上げだったとは予想外でした。「自力では無理でも、パソコン教室の先生というプロが付いている」のが口癖だったのに......。

A社の届出事項変更届
  • 画像をクリックすると別ウィンドウで拡大

しかし、今年度のサーバー/ドメインの移転は、3月に開かれた理事会の議決事項なので、来年に延期するわけには行きません。そこで、A社のサポートに対して契約担当者を変更するにはどうしたらよいか問い合わせるメールの送信だけしてもらって、担当者変更届のFAX書式(PDFファイル)を入手した後、前担当者欄に署名押印してもらって、残りは私が行うことにしました。

私にしても

  • 自分のWebサイトを約20年前から HTML ベースで運営している
  • 現役時代の最後の15年くらい素人ながらひとりで会社のWeb担当者(素人システム担当者兼任)をやっていた

だけの経験しかなかったので、ドメインの移管なんて初めてで不安でしたが、新旧レンタル・サーバー会社のサポートにメールで私の考える手順が間違っていないことを確認してもらいながら、なんとか無事処理しました。

時系列

時系列を追っていくと次の通りです。

年月日事項
2021/05/21 会長宅に出向いて前担当者欄に署名・捺印してもらった届出事項変更届をA社にFAX。なお、解約希望月2021年6月末、ドメインはさくらインターネットに移転予定と記入済
2021/05/24 A社から届出事項変更完了のお知らせメール
2021/05/25 レンタル・サーバー解約届の提出期限(有効期限前月の25日。遅れると自動更新)
2021/06/02 A社からサーバー更新のお知らせメール
2021/06/03 A社からドメイン解約申請受付のメール
Network Solutions 社(以下NS社)から会長に「Transfer Authorization Code(s)」のメール(英文)。ICANN の LOOKUP で確認。「active」に変わっていた。これで一安心!
A社にレジストラへの Admin メール・アドレス登録変更を依頼 → NS社から私にも「Transfer Authorization Code(s)」のメール
2021/06/10 任意団体として会員登録、契約担当者は私。[さくらのレンタルサーバ] 仮登録、クレジットカード登録。このメールに、会員ID、パスワード、FTP情報、メール・サーバー情報、コントロール・パネル・ログイン情報が記載されている。無料お試し期間14日
さくらインターネットのサーバーに各種ファイルをアップロード
2021/06/11さくらインターネットから「お申し込み受付完了のお知らせ」メール(ドメイン移転)
JPRS から「レジストラトランスファー承認手続きのご案内」のメール(承認のための特定 URL 記載)
指定 URL にアクセス → レジストラトランスファーを承認
さくらインターネットから「ドメイン転入作業開始のご連絡」メール
JPRS から「レジストラトランスファー承認手続き完了のご連絡」メールが来たので、ICANN の LOOKUP で確認
さくらインターネットから「【お申込み】クレジットカードによるお支払確認について」のメール
2021/06/12 会のドメインがさくらインターネットのサーバーで有効になった。
2021/06/15 会のWebサイトを Google Search Console に「ドメイン」として登録(従来は https://~.net/ で URL プレフィクス登録)。
2021/06/19 さくらインターネットから「【お試し期間終了】クレジット決済予定のお知らせ」のメール
2021/06/24 さくらインターネット、お試し期間終了
2021/06/30 更新しない場合のレンタル・サーバー有効期限(この日までにコンテンツを移転しておく必要あり)
2022/06/03 ドメイン有効期限(A社受付分)
2023/06/03 ドメインの新有効期限(さくらインターネットへの移管にともなう延長)
ICANN の LOOKUP でのドメイン登録状況(移転後)

ということで、6月に無事レジストラ間のドメイン移転を終えました。現在の ICANN での登録状況は、右画像のようになっています。登録者(Registrant)の項目の e-mail、電話番号、住所は、さくらインターネットのものが記載されています。以前は会長の e-mail、電話、住所がそのまま掲載されていたので、プライバシーの点でも良くなったと思います。

また、「さくらのポケット」というファイル・サーバー機能も使えるようになりました。会の会長、副会長2名、私の4人で Google ドライブを使って資料受け渡し&機関誌編集を行っているのですが、ワードで作成したファイルが勝手に書き換わってしまうことが問題になっていたので、タイムリーでもありました。